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最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)3650号 決定 1957年12月05日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人竹内周造の弁護人白川慎一の上告趣意第一点前段は、原判決には被告人竹内が日本国有鉄道職員であることを認定しながら、その身分が収賄罪の構成要件である公務員に当ることを示す法的根拠を示していない違法があると主張する。しかし、公務員の収賄罪を判示するに当っては、公務員であることを判断することができる具体的事実を示し、その者が職務に関し賄賂を収受した事実を説示すれば足りる。その公務員たることの資格が認められる法令上の根拠までも示す必要がないことは判例の示すとおりである(判例集二巻一三号一七五六頁、四巻二号二六八頁、五巻八号一五八六頁)。所論後段は、判示第一の(二)の所為に関しては刑法一九七条の三のみを適用すべきではなく、同法一九七条の二の規定の適用をも示さなければ違法である、と主張する。しかし、前記所為の罰条は同法一九七条の三であって、第三者への供賄を規定する同法一九七条の二は本件に何等関係を有しないから、法律適用としてこれを示す必要のないことは明らかである。それゆえ、論旨はすべて採ることを得ない。

同第二点の論旨は、事実誤認、量刑不当の主張であって、適法な上告理由に当らない。

被告人山本哲蔵の弁護人中川宗雄の上告趣意第一点は、本件贈賄は被告人竹内の職務に属しない不正行為に関してなされたものであるから、賄賂罪成立の要件を欠くものである、と主張する。しかし、原判決の確定したように被告人竹内が判示用品係主任として同鉄道所有にかかる軌条その他の資材の保管及び出納等の職務に従事していた以上自己保管中の中古軌条を擅に他人に融通してならない職務を有すること明白であるから、賄賂罪は成立するものといわなければならぬ。それゆえ、論旨は採ることを得ない。

同第二点は、原判決の事実認定にそわない前提に立って、原判決の違法、判例違反を主張するに過ぎないものであるから適法な上告理由に当らない。

よって刑訴四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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